NICENESS 22AWの展示会を終えて帰路につく車中で、僕はそんなことを考えていました。
これまで沢山の服を見てきて、可能な限り袖を通すように心がけてきたのですが、そのせいか「初めまして」の感覚が皆無と言っていいほど少なくなりました。
いつも言うように、いい洋服は山ほどあります。
けれど、お店で売りたい洋服はそれほど多くはありません。
こんなことを言うのも変ですが、売るというのはなかなかエネルギーが必要でして、簡単ではないんです。
だからこそエネルギーの使い方には慎重になる(歳のせいもあるw)。
NICENESSのコレクションはいつも驚きに溢れています。
技術的な作り込みもそうだし、デザインもそうだし、アイディアも研ぎ澄まされている。
想像を遥かに超えた深い思考とチャレンジスピリッツがあり、既存の服の文脈とは一味違うオリジナリティに溢れています。
いつも同じような服を選びがちな中年の自分に、新たなモチベーションというか、こういう服を着てみたい!という衝動を与えてくれる。
これは、大人の冒険です。
今シーズンは10回目のコレクションということもあり、その気概が洋服から溢れ出ていました。
(きっと郷さん達はいつも通りに淡々とやったコレクションなんだと思うけれど)
さらにはぐっと渋みが増して、僕好み。
まずはデザイナーの素晴らしいプロローグからご一読ください。
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NICENESS AW22 Collectionは前シーズンの“Tribe Circle”の世界観に新たな視点を持ち込んだコレクションです。コレクション制作にあたり、フランスで買った古着のジャケットを眺めていたら内ポケットから枯れた花が出てきました。元の持ち主は瑞々しい花をどんな気持ちでポケットに入れたのでしょう。
この枯れた花との偶然の出会いが本コレクションの制作における指針となりました。一枚のジャケットに入れられた花を通じて人種や種族、距離や時間を超えて、人間的なつながりを感じました。
本コレクションでは刺繍で花を描いたり、花を支える茎をモチーフとしたテキスタイルや、花びらをイメージしたカッティングを施したりと枯れた花から発想を得たデザインが多くあります。
作ろうと思えば簡単にものが作れる、便利で開かれた時代にはなりましたが、工場の職人さんに自分のアイデアを伝えると「昔はできたんだけどね」と言われることが多くなりました。生産の様々な工程において機械化が進むことで、手作業では可能だった仕様や技術が確実に消えていっていると実感します。
現代の技術だからこそ可能な仕様もありますが、過去に可能だった選択肢が失われている事実に直面すると、毎回歯痒い気持ちになります。抗えない時代の流れといえば、それまでなのかもしれません。
新しいマシンも使うし、すごく古いマシンも使う。
技術的に新しい糸も使うし、ずっと残されている古い糸も使う。
過去も現在も未来の空気感も取り入れて絶妙な配分を探る。
今シーズンはそういった、受け継がれてきたものと未来をつなぐようなアートに近い思考を取り入れながら、ものづくりに取り組んだコレクションです。
最後になりますが、いつも無理難題に果敢に取り組んで頂ける生産者の方々のおかげで、今シーズンも新しい生地やこだわりのあるアイテムを作りあげることができました。また、難しいアイテムをいつも店頭で販売してくださっている方々には心から感謝しております。
10シーズン目となるコレクションも目で楽しみ、手で触れ、袖を通して体感して頂けると嬉しいです。
初回のデリバリーはコーデュロイに始まり、シグニチャーとも言えるカディ、そしてこれでもかと作り込んだロイヤルオックスのシャツ(襟が付け替えられる3パターン仕様)と錚々たる顔ぶれです。
ロングレングスのジャケットも過去最高の出来ではないでしょうか。
肩周りをコンパクトにすることでルーズな印象はなくなりました。
新型のダブルブレステッドの完成度の高さを試着して感じた時、よりブランドへの信頼が増したことは言うまでもありません。
サイドシームの無いコーディロイパンツはセーラーパンツをベースに新たにデザインした新型で、うっとりするほど美しいシルエットです。
しばらく脱げませんでしたw。
商品に関する解説はオンラインストアの各商品ページにありますので割愛しますが、全商品にストーリーがあり、単品でも完結するものづくりをしています。
全身コーディネートでなくてもトライしやすいものばかりですので、NICENESSが気になっている方にもエントリーしやすいシーズンだと思います。
オックスフォードのシャツは2色買って、クレリックにして着る予定。
この超贅沢なアイディアもNICENESSならではだと思います。
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そんな10回目となる22AWコレクションは、7月17日12時からスタート致します。
店頭、オンライン同時スタートです。
今回はそれぞれ在庫を分けてオーダーしておりますので、オンラインストアで完売の場合も店頭に行けばご覧いただける(はず)です。
*在庫には限りがございますので完売の場合にはご了承下さいませ。
自由な精神と好奇心で良服と向き合っていただけたら幸いです。
どうぞお楽しみください。
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