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2024.04.19

セレクトショップの仕事 / NICENESS

平林です。

今までGATHERING勤務でしたが、IDEALとしての新しい取り組み準備のため、先月こちらに戻ってきました。

その話はまた後日。

 

私は2014年から4年間、ENSEMBLEに在籍し、当初 橋場さん(IDEALオーナー)と二人三脚で店を切り盛りしていました。

当時から橋場さんの取り扱いブランドに対するリスペクトと先見の明、本質を見抜く審美眼はキレキレ。

国内外、有名無名問わず様々なものを仕入れ、お客さんたちを魅了していました。

この期間に色々な事を吸収させていただきましたが、最近は当時言われたことをよく思い出します。

働き始めて数シーズン経つと、服屋のコツが分かったかのような気がしてきて、生意気な口が出てくるようになるんです。

それはある海外ブランドの納品があった時、「なんでこんなマニアックなブランドをわざわざやるんですか?」と。

要は「誰も知らないようなものは売りにくいから大変です」ということ。

その時の返答が、 「それがセレクトショップの仕事だから」でした。

「直営店が何店舗もあるようなビックブランドは、もう自分が鼻息荒くしなくても充分凄いって事は認知されてる。

そうじゃない、本当に良くて、まだまだ知られていないブランドを応援して、大きくなる手伝いをさせてもらうのが僕らの仕事だよ。売るのは簡単じゃないけどね。」

橋場さんにとってはいつも思っていることを答える些細な返答だったと思いますが、効率面重視だった自分にとっては考えさせられる言葉でした。

そんな橋場さんだからこそ、ブランドチョイスやセレクトが他とは違って面白いです。

今でも展示会では出来る限りすべての服に袖を通し、デザイナーのやりたかった事を理解しようとコミニケーションをとっています。

自分の中での解釈と、プロダクトだけではない多角的に捉えたセレクトは、マニアックながらも、本質をとらえたラインナップになっています。

中でもNICENESSはここ数年、ENSEMBLEが特にプッシュしてきたブランドの1つです。

今回はそのNICENESS 24ssのセレクトにフォーカスしてご紹介します。

 

H - 橋場 / N - 平林

 



 

N / 橋場さん、今回はどんなイメージで仕入れをしていますか。

H / 良い悪いの判断、物の良し悪しはその人自身が決める事だから、自分の思ってる事で話すね。

 

今回はクラフトがテーマ。

今、世界でクラフトをモノ作りのコンセプトにしてるのはNICENESSとLOEWE、JW Andersonだと思うんだよね。

LOEWEってファンデーション クラフトプライズっていうのをやっていて、世界中の作家を毎年ピックアップをして表彰してて。それは画でも書でも紙で作ったようなアートでも。

アンダーソンはそれをモードのレベルで評価している。

なんかクラフト,民藝って言うと、どうしても人間チックなものを思い浮かべるでしょ。

N /そうですね。生活の中での器とか箸とか。

H / クラフトってリアルなところに評価されがちだけど、アンダーソンは世界で1番クラフトをモードに落とし込んでいる人。後はドリスヴァンノッテンもその1人だと思うけど。

それ以外だと、自分的には郷さん(NICENESS デザイナー)がクラフトの精神で服を作っている唯一の人かなって思う。

 



 

N /もっと工業製品というか、Theファッションブランドとして作る方はいますよね。

H / そうだね。それはそれである種 完成されているものだから、違う凄さがあるんだけどね。

なんか、僕が郷さんの服に惹かれるのはそこじゃないクラフトの部分なんだと思う。

温かみがあるよ。服に。

で、次のNICENESSの24AWコンセプトは【 Access  to Crafts 】

クラフトにたどり着くと、いわゆる世界中の民芸にいってさ、NICENESSが面白いのは一部の国だけを讃えているんじゃなくて、「インドにはインドの魅力があって、イタリアにはイタリアの凄さがある」ってところ。

世界中に存在するクラフトが着想源なんだよ。

 



 

H / ざっくり結論を言うなら僕がNICENESSを買うなら、クラフトを感じるモノが良いんだよね。

このジャケットを見ても素敵だなぁって思うし。

こういう服を日常に取り入れて着てる人って何か気にならない?

N / そうですね。何者なんだって思いますね。

H / 今お洒落って記号化されちゃってるから、街でそういう人を見ても「気を使ってるな」とは思うけど、「気になる人」とまではならない。

でも、LOEWEとかThe RawとかNICENESSとか着てる人を見ると素敵だよね。

どこの?みたいな。

そういうブランドってベースがクラフトの思想にあってさ

デザイナーってスターが多いから、全て自分の世界観で仕上げる人が多いけど、郷さんは意外にも人の力を借りれる人。

なんとなく分かる?

N / そういった方々とは毛色が違うなとは思います。

H / 他のスターデザイナーのような自分のスタイルに技術者を当て込むタイプじゃなくて、

郷さんは、技術者の魅力に沿ったデザインをしてるところがまさにクラフト。

そういうところが、自分も歳をとって惹かれてる部分。

服以外にも興味があるものがいっぱいあるけどさ、家具とか器とか。

もはや服は何でもいいくらいなんだけど、自分が買って着るなら、美しい仕事をしているものがいいよ。

作った人のパワーを感じるもの。

ここの服には作った人たちのエネルギーがすごいあるよ。

その部分を素敵だな。魅力的だなって感じる人が増えるといいよね。

 



 

N / なんでもいいからこそ面白いと思えるものを選ぶ感じですか?

H / そう

後はより興味と服が近づくといいよね。

服は、自己表現の1つだから

自分の趣味とか、興味と寄り添うものがいい。

N / そういう意味では、コムデギャルソンを買う人でアーティストが多いのはわかりますね。

H /川久保さんのマインドを着たいと言う感覚だよね。

NICENESSは難易度高い服が多くて、自分に似合うのかって思う時もあるけど、やっぱりそのマインドを着たい。

あと知らないことを教えてくれる。

手仕事でこんなことができるんだとか。

ざっくりとしたインド、ざっくりとしたイタリアのビスポークとか、

そういうのは他でもあるかもしれないけど、それをきちんとファッションに落とし込もうとしているのが、他とNICENESSの大きな違いじゃないかな。

郷さんは奥行きのあるものを作ってるから飽きない。

うちはNICENESSを記号化して勧めるというやり方より、クラフトの魅力を知って欲しいからそういったものを型数揃えてやってるよ。

実際着てもらうと深みを感じてくれると思う。

 


MADE BY HAND /  INDIA series

 

N /自分なんかはつい表面的なセレクトをしてしまって、その時売れてくれればオッケーでやってしまいます。

それは僕に限らず、一般的な傾向だと思うんですが、橋場さんのセレクトってそこを超えたところにありますよね。

H / いや、”超えたい"だね笑

表面的って言うと悪く聞こえちゃうけど、そのやり方がみんな一緒だから、それがファッションをダメにしてる。

だからもう少し奥行きを店側が理解して取り扱わないとブランドが短命になるよ。

せっかくいいブランドでも1 、2年で散ってしまうのは悲しい。

そのやり方でいくとレア物だけを売っていかないといけない。

じゃあそれを作るデザイナーの身にもなってみろって話だから。

僕らの売り方を考えないといけないよね。

可能性や奥行きを感じるブランドに関しては、どうやってその奥行きを表現するかっていうのが我々の使命と思ってる。

だから味わい深いものをじっくり楽しめるセレクトショップがいいなって思うよ。

 



 

H / じゃあ本題に行きますか笑

N /詳しいモノづくりの部分はブランド説明としてあるので、橋場さんなりのスタイル提案でお願いします。

 

H / 今回はインドシリーズが面白い。

夏暑いじゃん。それこそインドと変わらないくらいに。

そういうのもあって、このゆるさが春夏の気分だったんだよね。

このゆるい感じを夏楽しむイメージ。

 



 

H / 何十年も服屋をやってるから、無地が売れるのはわかってるんだけど笑

ちょっとギア入れて柄物着て欲しいじゃん。

やっぱりファッションだから、夏もギアを入れて楽しんで欲しい。

 




Shirt / Puthli.C

 

H / ウチは中でもPAM×CRAIN、FARROKH×BULSARA この2型のセットをピックアップしてる。

この辺は郷さん達のメインテーマと重なってるところもあってね。

 


Jacket / PAM

Pants / CRAIN

 


Jacket / FARROKH

Pants / BULSARA

 

H / このMADE BY HANDのインドでの取り組みは23AWがきっかけになって、これが2回目。

ものづくりのベースとしては新しい感じだね。

このジャケットも手紡ぎ手織りの生地だから、所々節もあってこの雰囲気好きだなぁ。

NICENESSでイージーパンツも珍しいよ。

去年めっちゃ暑かったじゃん。

あの暑さでどうやって涼しくファッションを楽しむかはデザイナー本人も話してて、それが今回のイージーパンツとかの仕様に繋がってるんじゃないかな。

あとは春にスーツとは違う生地のジャケットが似合う大人がかっこいいと思ってね。

 



















 



 

H / あとこのピッコロのシャツ、やっぱ良いわ

絶対にアイロンかけない

N / セットアップ同様これも橋場さんの私物ですよね。生地的にやめたほうがいいってことですか?

H / いや、かけたほうが綺麗なんだけど、この超高級素材を洗い晒しで着るって良くない?

 





 

H / 形も独特

ベースはイギリス、それでギャザーがぎゅっと入ってて、袖の振りはフレンチ。

それをイタリアのカルロリーバの生地を使ってナポリのサルバトーレピッコロで作る。

N / 盛りだくさんですね。

H / これは郷さんが言ってたけど、どんどんピッコロが上手くなってるって。

独特の丸さがあってこれは自分的にはパキッとドレスシャツみたいな感じで着たくないんだよね。

こんなシャツ、なかなか出会えないよ。

 








Shirt / TITO

 

 



リンガと因果 / Linga Karma by Yuto Kudo and NICENESS

 

N / 後はこの写真展。素晴らしかったです。

今回のコレクションで郷さん達が表現したかったことが詰まってますよね。

会期が4/29までなので、ぜひ体感して欲しいです。

 

 

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