ハシバの話 [ Part 1 ] の続きとなります。
GATHERINGの平林です。
スタッフトーク第6弾はハシバさんの話 パート2
25歳の時、山口から松本に単身で戻り 手探りの状態からスタートしたDIALOGUE
そこから新たなジャンルで挑戦したENSEMBLE
つまづきながらも続けてこれたのは、自分が好きで格好良いと信じたブランドがあったからと話してくれました。
NOBUO : ウチの店舗名は全てハシバさんが考えていらっしゃるじゃないですか。
「Dから始まる」そのコンセプトが自分は好きで。
それも改めて聞いても良いですか?
HASHIBA : それもあんまりウケない話だから、最近は控えてるんだけどね。笑
N : 笑
H : 「ABC」っていうのは日本で言う「いろは」
それをベースとして考えた時に、「ABC」を経て もう一歩突っ込んでくるような人が来てくれるお店にしたくて。
少し話が逸れるけど、自分にとって一番のお店への誉め言葉は「おしゃれすぎて入れない」「格好良すぎて近寄れない」て言われること。笑
逆に「誰でも来て下さい」的な お店よりも「ちょっと緊張するな」ってお店が好きなんだよね。
だから「ABC」はその例えであって、ファッションの「いろは」より一歩踏み込んだDから先の事が、
僕たちがやるべきゾーンだと思うんだよね。
N : いわゆる、ユニクロ・GUのようなファッションの入口から先って事ですよね。
H : そうそう。それで店舗名はDから始まる言葉でいこうって決めたんだよね。
色々探してたら「DIALOGUE / 対話」っていう言葉を見つけて。
「お客さんとの対話」「デザイナーがモノとの対話」「時代性との対話」
あらゆるモノと向き合って、その都度その都度 答えを出してく という事が対話という言葉の意味。
それがお店の名前と凄く合ってるなって思って名付けたんだよね。
N : 確かにセレクトショップのコンセプトとも合ってますね。
H : あと良いなって思ったのが、DIALOGUEの最後のE。これって読まないじゃん。
その消えてるっていうのが、単語として格好良いって思ってね。笑
N :目の付け所が マニアックですね。笑
H : DIALOGUEは良いなって思う要素が詰まってたから。笑
あと、自分の中でルールを決めた方が、よりクリアな事が閃きやすくてね。
それでもし次にお店をやるとなったら 順番的に「E」だなって。
N : DIALOGUEが2005年で、6年後の2011年にENSEMBLEオープンですよね。
ENSEMBLEにも同様に思いがありますよね。
H : そうだね。
ちょうどその頃、「NUMBER(N)INE」の宮下さんが「Soloist.」を立ち上げたんだよね。
それを聞いた時に、確かにデザイナーって一人一人が演奏家の様だなって共感して。
その演奏家たちが 自然と集まってきて即興で弾く感じって面白いなって。ジャズの様な。
そしたら「ENSEMBLE」っていう単語が頭に浮かんで、これが良いなってなったんだよね
DIALOGUEがクールな印象に対して、ENSEMBLEはもっと熱っぽい。その対比も良くてさ。
N : 自分がお客さんだった時がそうなんですけど、
どうせ買うならここで買いたいって動機は、単純にそこに欲しいモノがあるだけじゃない理由があって。
買い物中の余談でハシバさんからお店のコンセプトの話を聞いて、グッときてました。笑
H : 笑
N : でも男ってそういうのに弱いと思うんですよね。笑
DIALOGUE / ENSEMBLE / flair / GATHERING
店名一つ一つに思いとコンセプトがあって、
改めてお店の成り立ちを聞くと、来て頂いてるお客さんも気持ちが入ってくれそうです。
H : そうだと嬉しいね。
N : DIALOGUEの話に戻りますけど、当時のスタートのブランドは何だったんですか。
H : SOPH.をメインでやってたね。
それ以外のやりたいブランドは、全部 長野市のお店でやってたから出来なかったよ。
N : バッティングNGって事ですよね。
ここに載せる事じゃないかもなんですけど、
ブランドを扱えるお店っていうのは、基本的に1県1店舗。または1都市1店舗と決まってます。
扱えるお店が限られるので、セレクトショップはある意味 陣取り合戦ような感じですよね。
ハシバさんが長野県に戻ってきた時は、長野市全盛期だったんですね。
H : そうそう。凄い人たちがお店を構えてるから、当然隙間はなくて。
最初はそのスキマのスキマをやってたよ。笑
N : じゃあ山口の時やっていた、シュプリーム、ナンバーナインやグッドイナフとか総じて、やりたいけどやれなかったと。
H : そう。向こうでは何でも出来たのが、こっちだと何も出来ない。笑
でもその時 たまたまUNUSEDとかサスクワッチとか仲良くさせてもらってたから、
長野市でやってても取り扱わせてもらってたね。
でもSOPH.が一番 評判良くて売れたかな。
都会的でシンプルで機能的な服が、松本に合ってたんだろうな。
当時 最高ランクのクオリティで、今でいうとCOMOLI/AURALEEの感覚に近いかな。
その時はSOPH.以上にクオリティの高いストリートウェアは無かったよ。
それで大人のお客さんが凄い来てくれるようになったから、
その人達に向けたブランドをやっていきたいって考えた時に、次はvisvimしかないと思って始めたね。
N : visvimは長野県でやってるお店は無かったんですか?
H : どこもやってなかったね。
オファーして半年くらいかかってスタート。
N : なるほど。初期のDIALOGUE はSOPH. / visvimがメインだったんですね。
H : そうそう。特にvisvimはもの凄く反響があって、本当に感謝しかない。
あと、ストリート全盛の時は、ネームバリューがあれば置いとくだけで服が売れたけど、
visvimの場合は、「これは〇〇の天然染をしていて」とか、ストーリーのある服だから、深い接客や語りが必要な服。
こだわりのあるお客さんが来てくれる様になったから、我々にも進化を求められたね。
あの時visvimをやらしてもらえなかったら、今のステージは無いと思うな。
N : ENSEMBLEをやろう!!今だなって思った時はどのタイミングだったんですか。
H : 2008年くらいかな。
UNUDER COVER / NUMBER(N)INE / N.HOOLYWOODから立て続けにオファーをもらった時だね。
でもDIALOGUEのキャラじゃ無いし、一緒のお店に置いても全部がゴチャゴチャになっちゃうなって思って。
トモノリにもお店を1つ任せたいとも考えてて、色んな事が重なった時だね。
N : なるほど。
H : あとは実際にやってみて検証。
とにかく試してみるっていうのを自分の中では大切にしてるから。
でも正直 ENSEMBLEの最初は上手くいかなくて,,,
N : そうだったんですね。
H :あの時は落ちたねー。笑
DIALOGUEの最初はSOPH.が華々しく飾ってくれて、
その後 visvimをやった事によってお店がメジャーになって、
、、、からのだったからね。笑
N : トントン拍子からの、、、
H : ただそれでも続けて行くモチベーションを保てたのが、ネイバーとダブルタップスで。
その時にこの2つの取り扱いが決まったんだよね。
N : おーENSEMBLE オープンの時に。
H : そうそう。それでENSEMBLEでネイバー、DIALOGUEでタップスをやったんだけど、
この二つは自分の青春よ。
高校生の時から知ってるブランドで、それが自分のお店に入って来るっていう高揚感があって。
N : それくらいのビッグブランドですもんね。
N : あとSUNSEAもENSEMBLEの初期メンバーですよね。
Nハリ、アタッチメント、ネイバーって並びを聞くと 少し異質なブランドセレクトですよね?
H : そうだね。
ENSEMBLEをやる時、会社の方針で細身のモード服をやろうってなったんだけど、
自分的に「これからそっち系が盛り上がるのかな??」って疑問だったんだよね。
N : 現時点では良いけど、そこから5年、10年を見据えたときにどうなるかって事ですよね。
H : そう。せめて自分の中で面白いなって思うブランドを新しくやりたくて、
か な り 探してSUNSEAを見つけたんだよね。
他のブランドとは毛色が全然違うけど、絶対こういうのが良いって信じてやったね。
N : 先を見据えたセレクトだったんですね。
H : 最初はもちろん誰も知らなかったから、常連さんが面白がって買ってくれてた感じだったけど、
2013,14年あたりかなー そこから反響がドーンって笑
ちょうどその頃 ノブ君も買いに来てくれてたから分かると思うんだけど、ENSEMBLEの中で突き抜けたねー。やったー!!って。笑
その時に「これが自分のやりたかったENSEMBLEだな」って実感したよ。
お店を取り敢えずオープンしたものの、不安要素がいくつもあった中で、
こういうお店がこれから面白いんじゃないかって確信になったのがSUNSEA
N : なるほど。色々検証してみて、そこに光明が見えた感じなんですね。
H : そう。あとはUNUSED/kolor/sacaiとかね。
ベーシックな服はSOPH.とvisvimで充分だったからね。
ストリートはネイバー、タップス。
そこ以外でやれってなったら、これしかないだろって思ってたよ。
これから 時代の風が吹くとしたら、SUNSEA/kolor/sacai/UNUSED この4つだなって。
N : でもDIALOGUEのハシバさんを知ってる方は驚きますよね。
SOPH. / visvimの人がいきなり系統が変わって。
H : そうそう。いきなりさ 細身のフリマパンツにビッグTの人みたいになって。
常連さんは「ハシバ君、どうしたの?」って感じだったと思う。笑
でもそのくらいしないと違う事が出来なかった。
今思い返すと あの頃が一番頑張ったんじゃないかな。笑
色々と考えてチャレンジして、洋服に対して一番向き合った時期かもしれない。
N : それを聞いて意外でした。最初から順風満帆かと。
H : 最初はつまずいたけど、どんどんと自分が格好良いと信じてた服が売れ始めて。
売れてからやるっていうよりも、良いなって思ったモノが売れるほうが気持ち良くない!?
N : 確かにそうですね。
H : 自分がやりたい事と、お店として成り立たせないといけない部分のバランスが難しいけど、
ENSEMBLEではそれを一番鍛えられたかもしれない。
あとはクオリティかな。特にkolorはさ 素材の使い方は日本一じゃないかな。
N : おー それをもう少し聞いてもいいですか。
H : 今でこそ小森さん(COMOLI デザイナー)や岩井さん(AURALEE デザイナー)が当たり前のように使ってる生地感とかって、
10年くらい前にkolorがメンズの服にドンドン落とし込んでいっててさ
ジョーゼットなんかいい例じゃないかな。あとカルゼとか。
そういった素材のアプローチとかはkolorをやって凄い勉強になった。
N : kolorって商品名の前に素材の名前が書いてありますもんね。
それを見て、分からなかったら調べてって感じですよね。
H : そうそう。だからこれはもう阿部さん(kolor デザイナー)は今のメンズウェアの布石をそこで打ってたね。素材ってアプローチを。
kolorって今は皆んな違う捉え方をしてて、デザインの方ばっかり注目されちゃってるけどね。
最初は凄いシンプルで、素材の使い方が他とは全然違うブランドだったから、もの凄い格好良かったし、そのおかげで勉強にもなった。
服をもっと深く知るキッカケ。
N : ハシバさんのその青田刈り的な感覚。
ブランドの展示会に行った時に「これはやりたい」って判断はどこでされるんですか。
H : 一番難しい質問だね。説明しづらい。笑
でも単純に好きかどうか。直感かな。
N : 直感
H : ただそのベースとして山口時代に社長に教えてもらった事はあるよ。
N : 真ん中をやれという。
H : そう。あとはデザイナーが持ってる美意識が自分と合ってるかと語れる服かどうか。
でもそれは服に滲み出てくるからね。
N : お客さんは知らない事だと思うんですけど、僕ら取り扱っていないブランドも相当 見に行かせてもらってますもんね。
かなりこぼれ落ちている状態。
H : 相当あるね。笑
N : その中で自分が好きかどうか、真ん中のファッションなのか
とかを当てはめてジャッジするような感覚という事ですよね。
H : そう。じゃなきゃお客さんに売る時 辛くない!?
N : 確かに辛いっす。
H : 好きなモノじゃないとオススメできないでしょ。
➡︎ Part 3 / 「実店舗をこだわる理由」 に続く (後日更新)